第8回関西LibreOffice勉強会・開催レポート
この記事はLibreOffice Advent Calendar 2014の14日目です(公開がまたもや次の日の15日になってしまいました)。前日はikunyaさんの「LibreOfficeのコメント機能を活用する」でした。
2014年12月13日(土)に第8回関西LibreOffice勉強会を開催しましたので、今回はそのレポートを書きます。 参加者は18名でした。4日前くらいまで10人くらいしか申込がなくて少な目だなと思っていましたが、蓋をあけてみるといつも通りでよかったです。懇親会参加者は9名、2次会は7名でお茶しました。
関西LibreOffice勉強会では、だいたい年3−4回を目標にしていますが、今年も3回開催できてよかったです。 今回も住友電工情報システム株式会社の会議室をお借りしました。ありがとうございました。
今回は4つのセッションを行いましたが、それぞれにジャンルも様々でバラエティに富んでいました。
LibreOffice の Excel ファイルの互換精度について(60分)辰濱健一
まずは辰濱さんによる第2回徳島LibreOffice勉強会の再演です。資料は公開されないとのことですので、詳しめにメモを書いてみます。聞き間違えたり、理解が追いついてなくて間違っているかもしれません。
ExcelファイルをLibreOffice 4.2.3で開いてOOXML形式で別名保存し、元ファイルと比較するというもので、2つの方法で検証されたそうです。
1つ目は、OOXMLのオブジェクト構造をモデル比較する方法です。Excel 2013で(元ファイルとLibreOfficeで別名保存した)2つのファイルを開いて、外のツールから参照し、差分があればその値と違いを出力します。VBでcomを叩くツールを自作されたとのことでした。
XMLのタグと値を取り出して比較するわけですから、厳密に比較できますね。(※追記:メッセージで教えていただいたのですが、XMLの比較ではなく、オブジェクトでの比較ですね) ツールを完成させるには手間がかかりそうですが、一度できれば手動でリグレッションテストをすることを考えると相当楽にはなりそうです。
2つ目の方法は、UWSCというスクリプト言語を使って、Excel 2013で2つのファイルを開いて各シートのスクリーンショットを自動的に撮るというものでした。今回は、比較自体は自動化せずに画像を目視したそうです。
Webで公開されているExcelファイルで違いを比較してみると、シートの表示倍率が変わる、シートの外側の背景がグレーになった、ページの範囲が飛んでしまった、日付で「02月02日」が「2月2日」になった、フォントが変わった、セル結合したセルの「前の半角スペース」がとんだ、といったことを見つけられたそうです。
代表的なプロパティのみ調べてみたところ、セルの値はほぼ大丈夫だったそうです。結合すると先頭半角が飛んでしまう現象は、xlsxファイルのみでxlsファイルでは起こらないので、LibreOfficeのOOXMLフィルターの実装バグではないか?とのことでした。また、金額表示で円マークとマイナスの位置が入れ替わってしまったというものもあったそうです。文化圏によって表示順が違うのが原因で、こういう問題が起こったのではと推測されていました。
セルの値以外を見ると、均等割付がインデントに変わる、セル結合を解除すると背景色のついた範囲が違う、セルの塗りつぶしで色がかわった、などもあったそうです。オートシェイプも一見大丈夫にみえるますが、枠の大きさが変わったり、回転角が0になる。グラフでは、3桁区切りが飛ぶ、日付の書式が飛ぶなど軸の書式が引き継がれないことも見つかりました。ピボットテーブルでは数値と罫線のみで、ピボットテーブルツールとして機能しなかった、とのことです。
まとめとしては、値・数式の互換はほぼ問題なしだが、罫線は線種の互換がないものがある、行の高さ・列の幅に互換性がないものがある、ピボットテーブルは互換性がないということでした。ただ、調べたプロパティは10%以下しか網羅できてないそうです。 データ中心の機能だけを使っているファイルであれば相互運用可能と推測できるが、見た目にこだわるファイルであれば注意が必要、とのことでした。
詳しく調べられていて凄いです。罫線の線種の話は知っていましたが、それ以外は徳島で聞いて初めて知りました。現在は修正されている可能性もありますので、開発版で試そうと思って忘れていました。今度みてみたいと思います。
質疑応答では、以下のような話題がでました。 Q:PowerShellなどではなくUWSCを使った理由は? A:キーボードなどが叩けるので、具体的な操作が出来るから Q:LibreOffice側で対応が難しいものは? A:罫線などは難しい。LibreOfficeでは何ミリとかだが、Excelでは線種どれとかで、モデルの思想が違う。翻訳ソフトで日本語から英語にして、日本語に戻すと違うようなもの。 Q:ODFの比較をしたい場合には? A:ODFの仕様書を読んでモデルツリーを...もしくはLibreOfficeがcomのAPIを公開していればそれを叩く
罫線がずれない社内文書を作ろう Writer 編(60分)那谷進
続いての那谷さんによるセッションでは、罫線バリバリの稟議書WordファイルをLibreOfficeで開いて、どのようにすればスマートな作りに出来るか、というハンズオンっぽいセッションでした。
表の中に入れる場合、文章1行を表の1行に入れていくと、文章を編集した際に他の行も調整する必要が出てきます。1つの大きな行に複数行文章を入力して、図形描画で横線を描いて見た目を便箋のようにする、という方法を紹介されていました。
年月日などを綺麗に揃えようとしても、元ファイルの書式に引きずられているとうまくいかないケースもありました。 他にも、均等割付の話題もでましたが、サンプル文書ではスペースで整形されていてびっくりしました。Writerでは均等に文字を並べることはできますが、均等割付機能自体はないので、そのあたりをどうするかの議論もありました。
表の罫線の書式はどこを消せば影響するのか、あまり意識してなかったので面白かったです。辰濱さんからは、ExcelやCalcではどうなっているでしょうというクイズも出題されました。
文脈を確認しながらLibreOffice翻訳(40分)大橋和美
3つ目は大橋さんによるヘルプの翻訳の話で、「ヘルプを翻訳してみよう」というのが当日のタイトルでした。資料は修正して公開されるそうです。
UIの翻訳は短いので文脈がわかりにくく難易度が高い一方、ヘルプだと文章なので慣れてない人でもとっつきやすいという話があり、その発想は斬新に感じました。翻訳イベントでHackfestをする際は、ヘルプの方がよいかもしれません。
ヘルプ翻訳はついでには難しいので、30分でもよいので専念する時間をとること、ヘルプを読んで未訳を探してから、ネット検索してWikiのヘルプをみて、Pootleで街頭箇所を検索するという流れで作業されているそうです。
確かに、いきなりPootleで翻訳するよりも先に前後の文章がみれるヘルプを読んでいく方が分かりやすそうです。 ちょっと困っていることとしては、Pootleが重いこと、Pootleで検索しにくい(and検索がうまく機能しない)ことだそうです。
Pootleで翻訳を提案したあと、日本語ML(discuss)で報告というひと通りの流れを紹介されていました。 翻訳というテーマでしたが、参加者の皆さんの反応もよく、分かりやすいセッションだったように思います。
今年のLibreOfficeコミュニティを振り返る(30分)榎真治
私からは今年を振り返るお話をしました。後半は資料が出来ていなくて雑談になってしまったのですが、ディスカッションとしては盛り上がったように思います。
最後に+次のイベント
次回は3−4月くらいにしたいと考えています。興味を持たれた方は、ぜひご参加ください。また、ネタのある方は発表の立候補もお待ちしています。
また、関西で12/20(土)にバグハンティングセッション、12/21(日)に翻訳と2つの小さな集まりを行うことにしました。私自身が、ついついさぼってしまってLibreOfficeの作業ができていないので、イベントということにしました。他に参加者いない場合は(その可能性が高いですが)1人でやります。まだ場所をFIXしていないのですが、決まり次第MLなどでお知らせしますので、興味がある方はご参加ください。
明日のアドベントカレンダーは荒川さん(Arachansan)による「Drawを帳票ツールとして使う」です。お楽しみに!