Shinji Enoki's blog

LibreOfficeの話題を中心にする予定です

日本UNIXユーザ会「夏のドキュメンテーション祭り」を開催しました

2019年8月24日(土)に日本工学院専門学校・蒲田キャンパスで、日本UNIXユーザ会(以下jus)主催で「夏のドキュメンテーション祭り」を行いました。オープンデベロッパーズカンファレンス(ODC)2019の中での開催です。スライド資料や動画を共有し、簡単なレポートをします。

猛暑だった夏もやや涼しくなってきつつある中、多くの人が集まりました。セッションによっては満員で空気が薄く感じました。

ドキュメンテーションについて議論するため、藤原さんと私は関西で「ドキュメンテーションの集い」という勉強会をしています。今回、東京でもイベントをやってみようということで2人で企画しました。人や資金面でのサポートが得られるということで、主催は私が幹事をしているjusにしました。「エンジニアが実践的なドキュメンテーションをどう作るか」というテーマで3つのトークとパネルディスカッションを行いました。

企画の方向性や広報、さらにはスピーカー1人目として藤原さん、事務方としてお金の処理などはjusの岡松さん、ビデオ撮影やパネルの時のフォローはjusの松澤さん、写真撮影はjusの小山さん、私は企画、ODCやスピーカーとの交渉などを担当しました。どのセッションも、ドキュメンテーションについて考えさせられるお話でした。

「専門学校教育におけるドキュメンテーションの役割」藤原由来 (神戸電子専門学校 / ソラソルファ)

藤原さんはPandocのドキュメントを翻訳したり、Markdownの本を書いてる人ですが、セミナーでは専門学校での現場でのドキュメントについてでした。「知識を与える/魚を与える」場合は講師が先回りで細かくドキュメントを書く、「自分で知識を得る力を得る/魚の釣り方を与える」場合は学生がドキュメントを書く、と2つにわけてました。学生は文章を書くことになれてないのでテンプレートを使う、などの工夫が印象に残りました。

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「まだそんなドキュメントで消耗してるの? 開発効率を上げる攻めのドキュメンテーション」田中 一紀 (株式会社ソニックガーデン 業務ハッカー)

田中さんは「納品しない受託開発」というコンセプトで有名なソニックガーデンで活躍するエンジニアです。登壇は初めてとのことでしたが、堂々とされていてとてもそうは思えない感じでした。アジャイル開発でかつリモートワークされているなかでどのようなドキュメントを作られているか紹介がありました。本筋ではないですが、仕事しながらオーストラリア3ヶ月車で一周まわったお話にびっくりしました。ドキュメントは作るが仕様書は作らない、ドキュメントはコミュニケーションの手段と言われているのが印象的でした。

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「運用ドキュメント 2019 〜手軽にスピーディに継続的に保守するためのドキュメント入門〜」波田野裕一 (運用設計ラボ合同会社)

波田野さんはjusの幹事であり、運用ドキュメントの専門家です。今回はドキュメンテーションの戦略的な側面から、実際にどうやっているかまで盛りだくさんな内容でした。論理力を上げる必要があるというお話が印象的です。運用業務では人は入れ替わっていくので、人のナレッジを前提にしない、ということで全部ドキュメントにすべきということでした。ドキュメントの対象者がアルバイトレベルでは無限の工数がかかるので、対象想定スキルは応用情報技術者くらいがいいのではとのことです。私が見聞きする範囲では、スキル対象は下げすぎてる印象がありましたので、なるほどと思いました。また、平易ではなく属人化した方がよいものもあるとの説明もありました。もう少し暗黙知として人にナレッジを蓄えてもいいのでは?という感想は持ちましたが、入れ替わりが激しく、それでは通用しないことが多いのかもしれません。

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パネルディスカッション「開発・運用ドキュメンテーションをどうデザインするか?」

スピーカーの藤原さん、田中さん、波田野さんの3名と私で行いました。あまり打ち合わせはせずに会場からの質問を拾いながら進めました。いろいろ質問いただけて助かりました。「ユーザ企業でインフラ管理しているが、ドキュメントが追いつかない。陳腐化してしまう」という質問に対しては、波田野さんからは「使い捨てと資産部分をわけましょう」とコメントがありました。資産を作っておいて、シェルスクリプトで使い捨て部分は自動生成するようにされているそうです。

とてもよいセッションが揃い、また多くの参加者に恵まれてよかったです。講師の3名の方や手伝ってくださった幹事に感謝します。 jusの活動とは別に、関西での「ドキュメンテーションの集い」は10月ごろに開催できればと調整中です。

「COSCUP 2019」に参加してきました

2019年8月17日(土)、18日(日)に国立台湾科技大学(NTUST)で開催された COSCUP 2019に去年に引き続いて参加しました。COSCUPとは台湾で最大級のオープンソースイベントです。事前の無料チケット予約では1500名分?(正確な数は忘れました)があっという間に売り切れたそうです。雰囲気は少し日本のオープンソースカンファレンスに近いです。去年はGnome Asia 2018 SummitopenSUSE.Asia Summit 2018と同時開催で、私はopenSUSE.Asiaの方で発表したのと日本コミュニティブースで番をしていました。今年は日本のコミュニティトラックであるOSPNトラックができたため、その枠のCFPに応募して発表しました。

COSCUPでの台湾のオープンソースコミュニティの印象は、ベテランもそこそこいるものの若い人たちも多いなということです。出展や講演者側は男性が多いですが、参加者自体は女性も結構います。また、オープンソースだけでなくオープンデータやg0vといったシビックテックのコミュニティも参加しています。去年はブースが近かったWikimedia Taiwanやg0vのブースの人と結構お話したのですが、今年はブースをあまり回れなかったのでお話できませんでした。

台湾のLibreOfficeコミュニティメンバもブース出展していて、LibreOffice/ODFだけでなく、Fedoraなどいくつものブースを兼ねてたようです。その隣が主に日本メンバが参加しているラズパイブースでした。今年はとくにブース番でもなかったので、その付近にいるか、休憩スペースでスライドを作っていました。日本にいる間につくればいいのに、学生症候群で相変わらずギリギリにやってました。

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LibreOfficeなどのブースで

OSPNトラックではいろいろなメンバが発表していて、普段日本語では聞くものの、英語できくと不思議な感じを受けました。私はいつも発表しているCJKバグのネタでした。英語ということもあって、少し緊張しましたが、前の方で熱心に聞いてくれた人の反応を頼りにどうにかできました。25名程度来てくれたようです。韓国から参加しているLibreOfficeメンバのデヒョンは、話を聞きながら韓国語での検証をして、バグがあるとわかったと後で教えてくれました。

1日目の夜に、フランクリンが主催するLibreOfficeメンバーのディナーに参加しました。フランクリンとは、彼が提案している認定制度や若いメンバーの獲得について、小笠原さんと2人で詳しく質問して聞いたり、ディスカッションできて有意義でした。プログラマに限らず、いろいろな機会をとらえては誘っている様子がわかりました。彼のやり方はキャラクターに依存している部分もあるとは思いますが、勧誘の取り組みは日本でもやらなければと改めて思いました。

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LibreOfficeメンバのディナー

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Kapperさんの発表の様子

1日目が終わって夜中ごろに会場が電気系のトラブルで使えなくなるという事態が発生し、2日目は別のビルに会場を移しての開催となりました。朝の間に運営側はあれだけの規模の会場を動かしたのはなかなか凄いです。1日目の会場は全体的に暑かったのですが、2日目のセミナールームは19度の設定と寒くて薄めの上着を着ても凍えかけました。

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CUSCUPブース。スピーカーTシャツをもらいに。過去のイベントTシャツの販売などもしてたようです

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ジョブボードどころかジョブウォール。2日目終わりごろは一面に

英語のセッションはあまりなくて、OSPNトラック以外は聞きそびれたのですが、熱気は感じました。LTはサブ会場で中継を聞きましたが、盛り上がってました。私が特に楽しかったのは、キーボードと画面の両方を映して、その場でタイプしながら行われたプレゼンでした。

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話をしながらタイプするプレゼン

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LTに引き続いて、クロージング

来年も日本コミュニティトラックを予定されているようなので、検討してみようかなと思っています。気になった方はCFP(まだまだ先の話ですが)が出たら応募してみてはいかがでしょうか。

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1日目のお昼ごはん。路地を入ったところのお店に
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2日目お昼ごはん。1日目と同じ店に
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2日目の夜。5人で。これ以外にもいろいろあって、ラージサイズを頼んだのをちょっと後悔

「LibreOffice認定移行プロフェッショナル/認定プロフェッショナルトレーナー」に申請する方法

この記事では、The Document Foundation(TDF)のLibreOffice認定プログラムにおける、「移行プロフェッショナル」や「プロフェッショナルトレーナー」の申請方法について説明します。人に説明しようとして、長くなりそうだったのでブログに書くことにしました。

2019年5月25日(土)か5月26日(日)に東京で、日本で初めて認定のインタビュー(面接)をすることを予定しています。ヨーロッパから認定委員のうち1名が来日する予定です。認定の対象にあてはまりそうな方は、インタビューに間に合うように今のうちにへご応募ください。

前提条件の文書を読んでも該当するかわからない方は、certification@libreoffice.orgまで英語で問い合わせてください。また、私に相談いただいても構いません。正式な回答はできませんが、私の理解している範囲でお答えしたり、詳しい人に聞いてみることはできます。

なお、説明には私見が入っています。正確に知りたい方は、TDFの公式文書をご確認ください。私は認定移行プロフェッショナルを取得していますが、その当時から申込ページの内容も変わっていますし、制度について完全に理解しているわけではありません。

LibreOfficeの認定制度について

LibreOfficeを支える財団であるTDFは、LibreOffice認定制度を持っています。最初は、LibreOfficeコミュニティで活動している開発者に対して行われていました。LibreOfficeの開発者はLibreOfficeのサポートベンダに所属する人も多く、サポートしている開発者がちゃんとしたスキルを持っていることをコミュニティ外に示す仕組みとして作られたのだと思います。その後、開発者以外にも、LibreOfficeを導入する組織をサポートする「移行プロフェッショナル」、「プロフェッショナルトレーナー」などに制度を広げました。認定制度は、LibreOfficeを導入したい組織にとって詳しい人をみつけやすくする、LibreOfficeコミュニティで活動している人たちが正しく評価されるようにする、といったことを通じてLibreOfficeのエコシステムを強化することが目的だと思います。認定を受けた人は、プロとしてスキルがあるだけでなく、LibreOfficeのアンバサダー(大使)であることが求められます。

前提条件

前提条件の文書に説明があります。私は以下のように理解しました。

  • LibreOfficeへの移行やトレーニングについて、複数の経験がある
    • 経験がない場合でも最低6ヶ月間のトレーニング受ければクリアできるように読めましたが、トレーニングプログラムが実施されているという話は知らないです(私がウォッチできてないだけかも)
  • LibreOfficeやFLOSSコミュニティで活動している
    • まだ活動してない人でも、メンタリングを受けてLibreOfficeで活動したり、FLOSSなどの知識を示すなどでクリアできるらしい
  • マイグレーションプロコトルトレーニングプロコトルの内容を理解している
    • 申請ページに触れてあったのでここに追記してみました

認定費用

いまのところ無料です。

申請方法(以下は申請フォームの説明です)

TDFのWebサイトにある申請フォームから行います。フォームについてはさほど難しくはないのですが、どの項目に何を書けばいいかはやや曖昧な気がします。

順を追って説明します。 テキストエディタなどに書いておいて、フォームに貼り付けるのがよさそうです。

事前に読むもの

  1. 前提条件の文書を読んで確認します
  2. 認定行動規範を読んで理解します
  3. マイグレーションプロコトルトレーニングプロコトルの受ける方を読んで理解します。両方目を通しておくといいと思います(私はトレーニングプロコトルの存在を知らなかったので今回初めて読みました)

Name and Email Address

  1. Salutation:Mrs. / Mr.を選択
  2. Name*: 名前をローマ字で記入
  3. Surname*: 姓をローマ字で記入
  4. Email Address*: 連絡を受けるメールアドレス

Which Certification are you applying for?

  1. 受ける認定にチェックを入れます(Migration Professional, Professional Trainerの両方受けることも出来るのかも?)
  2. 前提条件を読んだことをチェックを入れます I have read the Certification Pre-Requisites*

Usernames and Activity within the LibreOffice/FLOSS community

ここはLibreOfficeやその他のFLOSSコミュニティでの活動を検証するのが目的です。私が受けた当時はLibreOfficeのみでしたが、いまは他のFLOSSコミュニティにも拡張されたようです。

  1. Username(s) within the LibreOffice/FLOSS community*
    • LibreOfficeシングルサインオンアカウントや、git、Bugzillaのアカウントなど活動が確認できるアカウント名を書きます。サイト名と一緒に書いた方が伝わりやすいでしょう。
  2. Activity within the LibreOffice/FLOSS community*
    • LibreOfficeやFLOSSコミュニティでの活動内容について具体的に書きます。TDFメンバーの場合は、"TDF Member since 2014-04"のように書いてもいいようです(1つ上のボックスに書くのかもしれませんが、多少違ってても問題ないです)
  3. TDF Members for verification*
    • TDFメンバーで、あなたがLibreOfficeやFLOSSプロジェクトへの貢献していることを知っている人を書きます。アカウント名で活動が確認できなかった場合、ここに書いた人に問い合わせが行くはずです。他の確認出来る方法を書いてもいいようです。

Professional Experience

  1. LibreOffice related Professional Experience*
    • 認定委員会が判断できるように、LibreOfficeへの移行やトレーニングの専門家としての活動内容を詳細に書きます。プロジェクトごとに移行台数やトレーニングを受けたユーザー数、自分の役割を書きます。
    • 移行計画書や相互運用性評価、トレーニングのスライドなど、関連文書は別途メールで送ります。
  2. Country of LibreOffice related Professional Experience*
    • LibreOfficeの国に関する専門的経験とありますが、私にはよくわからないです。導入の政策決定や導入支援に関与したケースとかでしょうか

Languages

  1. Spoken language(s)*
    • 喋れる言語を書くようです。よくわかりませんが、私なら、Japanese, English (a little) と書いて出してみます。
  2. Preferred language for Certification Review*
    • 認定を何語で受けたいかだと思います。"Japanese"でよいのではと思います。誰が通訳するのか決まっていませんが、私の時は小笠原さんが通訳してくれました。英語で問題ない方は"English"と記入ください。

関連文書をメールで送る

  • 移行計画書や相互運用性評価、トレーニングのスライドなど、関連文書は別途certification@libreoffice.org へメールで送ります。
  • どんな物を送るといいかは、前提条件の文書の最後のページが参考になると思います。

以上、認定に申請する方法でした。不明な点や間違っている点があれば、私までご連絡ください。

アルバニアでのLibreOffice Conference 2018に行ってきた話

今年の「LibreOffice Conference」は、2018年9月25日(火)-28日(金)にアルバニアの首都ティラナで開催されました。今年も参加してきましたので、思い出しながらレポートします。 この記事は「LibreOffice Advent Calendar 2018」の7日目です。昨日は安部さんによる「LibreOffice 6.2のCalcではSMALL/LARGE関数の順位引数に配列を使えるようになります」でした。

LibreOfficeコミュニティでは、年に1度、LibreOfficeプロジェクトに関わったり興味を持っている人々が世界中から集まって、情報交換や交流をするためにカンファレンスを開催しています。第1回目の2011年のパリから今年まですべてヨーロッパでの開催になっています。コミュニティメンバーは世界中にいますが、ヨーロッパに多いことが理由です。今年がアルバニアで開催されたのは、アルバニアコミュニティには若くて元気なメンバーが多いこと、ティラナ市役所ではLibreOfficeを始めとするオープンソースを全面的に利用している、といった理由がありそうです。メインのローカルスタッフ6名(7名だったかも)のうち5名が20代中ばまで、女性4名、男性2名という陣容でした。

カンファレンスについての記事は日経xTECHに掲載されています。また、こぼれ話的な小笠原さんの裏レポート村上さんの簡単なレポートがあります。ということで、以下は感想と写真を中心に旅の話なども交えています。

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オープニングセッションで、マリーナが挨拶中の様子
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アルバニアコミュニティのローカルスタッフたち

アルバニアについて

アルバニアはヨーロッパでは東のほうに位置し、ギリシアの北、マケドニアの西、モンテネグロの南にあります。イタリアを靴に例えるとかかとの部分とアドリア海を挟んですぐ近くです。事前に調べたところ経済状況があまり良くないという話がありましたが、行ってみたら街は思ったより安全でいいところでした。晩御飯というかパーティの帰りに真夜中に歩いてましたが大丈夫そうでした。アルバニアにいる間、ずっと天気が良くて、昼間は暑いくらいの日もありました。昼と夜で気温の差が激しく、寒い日は夜は毛布が必要でした。

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ティラナの中心にあるスカンデルベグ広場

アルバニアに行くのはそこそこ大変でした。日本からの直行便はありません。可能な限り安い便を探したら、エティハド航空で行きはアブダビとローマ、帰りはアテネアブダビでの乗換となりました。去年のカンファレンスはローマでしたので、フィウミチーノ空港で乗り換えるときに、去年ならここで空港の外に出たなあ、、と懐かしくなりました。

首都ティラナの空港は小さく、ティラナの街自体もコンパクトでした。私が普段使っているクレジットカードでキャッシングしようとしたところ出来ませんでした。アルバニアからは出来ないようにしているのかもしれません。とりあえず空港のボーダフォンショップでSIMをクレジットカードでゲットしたうえ、エアポートバスはユーロで支払いました。街は結構きれいですが、メンテされていない道とか建物が時々あるので油断は禁物です。クレジットカードが使えないことが多くて予想よりも現金が必要でしたが、ユーロで支払いができたり、街中にユーロからアルバニアレクへ両替できる店はありました。また食べ物や宿泊はとても安かったです。宿はD1 Hostelというところにしたのですが、ドミトリーだったこともあり、6泊で簡単な朝食付きで45ユーロ(約5700円)でした。

そもそも私がアルバニアという国のことを知ったのは、2016年にチェコのブルーノで開催されたLibreOffice Conferenceでした。Redhatのオフィスで行われたハックフェストで、アルバニアから来ていたAnxhelo(アンジェロ)と話した時に教えてもらいました。彼は今回のローカルスタッフの1人でもあります。その時は、まさか2年後にアルバニアに行くとは思いませんでした。

カンファレンスの内容

毎年ほぼ同じ構成ですが、火曜日はコミュニティ・ミーティング、水曜から金曜は3トラックに分かれてトークやミーティングが行われました。土曜日はローカルスタッフがガイドしてくれて街を歩きました。また、夜は火曜日はバーでのパーティ、水曜日はディナー、木曜日はバーでハックフェストが行われました。

プログラムの日付ごとのページに発表資料はリンクされていますので、内容に興味がある方はご覧ください。主に以下では感想をコメントします。

発表資料/プログラム

1日目:水曜日

水曜日の午前中は、ティラナ市長のお話や、TDFのBoard of Directors(ドキュメント財団のボード)やスタッフの紹介、この1年のプロジェクトの状況報告、LibreOfficeのサポートビジネスを展開しているCollabora Productivity(以下Collaboraと略)とCIBのスポンサーセッションなどがありました。

TDFとはThe Document Foundationの略称で、LibreOfficeコミュニティを法的に支えるためにコミュニティメンバによってドイツに設立された財団です。

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TDFのBoard of Directorsメンバー紹介
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TDFのスタッフ紹介
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Collabora ProductivityのMichael Meeksの発表。LibreOffice OnlineでCJKのIMEをサポートしたよと1行目にあります。去年のカンファレンスなどで日本語入力時のバグがあることは伝えてましたが、修正してくれました。

ティラナ市長がニルヴァーナのTシャツ(そっち方面に疎いので小笠原さんに教えてもらうまで気が付かなかったです)を着て、オープンで自由であることの重要性の話をしていたように思います。単にコスト削減ではない強い思いがありそうでした。私が英語力弱いのでうまく聞き取れなかったです...。ティラナ市民の平均年齢が27歳という話にもびっくりしました(これも聞き間違いでなければ)。

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ティラナのErion Veliaj市長

水曜日の午後は19セションでした。Simon PhippsからはOSIの20周年ということで歴史を振り返る話がありました。もうオープンソースという言葉が出来て20年たつということですね。TDFのデザイン担当スタッフであるHeikoのデザインチームの話も聞きました。カラーパレットの改善や新しいDrawのスタイル、アイコンの変更点、MS Officeのリボンに近い操作ができるノートブックバーの状況などのお話でした。

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Heikoのデザインについてのトーク。Drawの新しいスタイルについての説明

Muhammet Karaからはトルコの導入事例の紹介がありました。今まで知らなかったのですが、トルコでもそれなりに使われているようです。Muhammetのインタビュービデオが先日公開されています。ちなみにTDF WikiにLibreOfficeを導入事例のページがありますがトルコもいくつか載っています。日本の事例は日本語のページに書いていますがこちらにも書いたほうがよいのかもと思いました。

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ランチボックスをゲットする小笠原さん

台湾のBo-An Chenによる、LibreOfficeを利用している大学でのアンケート結果を分析している話もありました。台湾からはカンファレンスへの参加者が年々増えていて今年は5名でした。日本からの参加者は3名(小笠原さん、村上さん、私)で、人口比率からいくと日本からは少なすぎる気がします。村上さんのLibreOffice Onlineをロードバランサーを使ってスケールを試みた発表もありました。私も念の為に共同発表者としてクレジットしていたのですが、少し資料をレビューしただけでした。発表後に聞いてくれてた人からHAProxyを使う方法があるようだとヒントになるコメントもいただきました。

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村上さんの発表

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1日目の夜はコミュニティパーティ。Collaboraが5周年になるということでCollaboraからケーキが振舞われました。Kendyが頑張って切ってるところ

2日目:木曜日

木曜日は2トラックとミーティングなどのトラックで30セッションがありました。朝一番で、LibreOfficeの技術的な意思決定を行う「Engineering Steering Committee」のミーティングがありました。通常は電話会議ですが、毎年カンファレンスの時だけ公開で顔をあわせて議論します。

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Engineering Steering Committeeのミーティングの様子

他にも、台湾からのFranklin WengとEric Sunのトークが連続でありました。エリックは初めてお会いしましたが、組織で導入推進の役割をもっているそうで、カンファレンスでは珍しくユーザ寄りのImpressを使った発表のテクニックのお話でした。

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台湾のEric SunによるImpressを使った発表資料の作り方について

小笠原さんからは日本のコミュニティの状況についての発表がありました。私は役割分担ということで別トラックのTDFのQAスタッフであるXisco FauliによるBugzillaについてのお話を聞きました。

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XiscoのBugzillaの状況についての発表。1年間でのコメント数やコメントする人の数はかなり多いことがわかります

CollaboraのManaging Director(以前Webで肩書見た時はVPだった気がするのですが)で、LibreOfficeコミュニティにおける技術的リーダーのMichael Meeksがマーケティングトークをしていたのも意外でした。ビジネスの立場からマーケティングにエネルギーを割くことが多くなっているのかもしれません。Google Summer of Code(GSoC)というグーグルがスポンサーになってインターン生に奨学金を支払うプログラムがありますが、LibreOfficeは毎年参加しています。今年もその報告がありました。Markus Mohrhardがメンターを代表して司会していました。Markusは開発とQAの両方がわかっている珍しいエンジニアです。彼のブログはたまに更新されていて参考になります。2012年のベルリン以来久しぶりにお会いした気がしますが、元気そうでした。

私はCJKバグ(中国、日本、韓国の各言語に関連するバグ)についての発表しました。昨年の発表のアップデートです。直後にはイスラエルから参加しているLior KaplanによるRTL言語(右から左に書く言語)の状況で、同じような路線の話でした。そもそも私がCJKの話をするようになったのは、Lior(リオル)が2011年のパリのLibreOfficeカンファレンスでRTLバグについて話をしてて、面白いと思ったのがきっかけです。

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LiorのRTLバグについての発表

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中庭でくつろいでおしゃべり中

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2日目の夜はバーでハックフェスト。写真撮ってたらお前も入れと言われました

3日目:金曜日

金曜日は2トラックで18セッション(クロージング含む)でした。トラックの片方は主に認定のワークショップやインタビューです。LibreOfficeではビジネスのエコシステムを支援するために、LibreOfficeに関するノウハウのある人を認定する仕組みを作っています。最初はLibreOfficeの開発に貢献している人たち向けた開発者の認定だけでしたが、今はLibreOfficeへの移行や、トレーニングといった認定もあります。私も移行専門家の認定を受けています。日本からは他に受ける人がいないので、今のところ唯一です。早く2人目が出て欲しいです。インタビューセッションに途中から参加してみましたが、アルバニアの2名が移行専門家(LibreOfficeへの移行)の認定のためのインタビューを受けていました。1人はローカルスタッフでもあり、ティラナ市役所の導入について発表もしていたシルビアだったように思います。以前に、私はリモートでインタビューを受けたことがありますが、その時は小笠原さんに通訳していただいたので理解できましたが、英語だけだとなかなかハードだと実感しました。

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お昼ごはん。みんな上に登りだしました。私もここに連なって食べました

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フランスのコミュニティメンバたち

イタリアコミュニティのリーダーでTDFスタッフでもあるItalo Vignoliからはファンドレイジングを検討しているお話もありました。通常の寄付とは別に、テーマ別にお金を募ることも考えていきたいということでした。TDFではみなさんから安定して寄付を頂いていますが、よりお金があれば挑戦できることも増えます。ライトニングトークでは大勢の発表がありました。アメリカから初参加のCathy Crumbleyによるドキュメンテーションの話もありました。ジャケット着ていますし、雰囲気が違ったのでどこからかな?と思って聞いてみました。ちなみに、LibreOfficeコミュニティでは女性が少なめな点は課題だと思いますが、活躍している女性も結構います。TDFのBoard of Directors議長のマリーナや、TDFのスタッフでコミュニティの古参メンバーでもあるソフィー、CIBの開発者のカタリナ(そういえば今年はカタリナを見かけたなったです)、Membership Committeeメンバで今回のローカルスタッフでもあるヨナなどはパッと思い出しましたが、他にも大勢います。Cathyのカンファレンスについての記事も公開されています。

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アメリカから初参加のCathyのLT
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LTでルビでの挑戦について説明する台湾から参加の開発者Mark Hung。彼はCJKバグをよく修正してくれています

金曜の最後、LibreOfficeの誕生日をお祝いしてカンファレンスを締めくくりました。大きなケーキをカットして、みんな食べながら雑談して、三々五々帰っていきました。2010年9月末にOpenOffice.orgからフォークしてから8年。毎年この時期にカンファレンスを開催することを目指しているようで、いつもカンファレンスでお祝いしている記憶があります。その後、時間がある人たちとカフェ、レストラン、バー(みんな集まってるらしいと聞いて合流)と行ったので宿に戻ったのは日付が変わっていました。

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ヨナがLibreOfficeのバースディケーキを運んでるところ
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カンファレンスが終わって。左からQAをやっているraal(チェコ)、インフラスタッフのGuilhem、リリーススタッフのCloph(ドイツ)、Muhammet(トルコ)

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時間があったメンバと晩御飯へ

カンファレンス翌日のシティツアー

カンファレンスでは翌日に街をめぐるツアーをしてくれることもあります。翌日の土曜日に街の南の方に集合して、午前中街歩きをしました。ローカルスタッフのRedon Skikuliが所々で説明してくれました。ピザ屋でランチして解散でした。

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みんなで街歩き。Redonが説明してくれるのを聞いているところ
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かつて大量につくられたらしいトーチカ

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日本人が作ったという謎のモニュメント。ジャングルジムっぽいです

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このあたりだけカラフルな建物が並んでます

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お昼を食べたい人は残って、ピザを食べて解散。

ベラトにも行きました

余談ですが、9/30(日)-10/1(月)の予定を入れていなかったので、南の方の街ベラトに1泊してきました。ベラト城を夕方にのんびり散歩しました。住んでいる人もいてお店などをやっています。坂を登るのでいい運動になりました。旧市街の古い町並みの中にある宿Ana’s Rest Houseに泊まりました。小さな街ですが、城の展望台や朝食時の宿のテラスからの雰囲気はよかったです。鉄道がないので、長距離バスで移動しました。

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ベラト城の展望台から
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これも展望台から
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宿の前の小路
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橋からベラト城方面をみたところ。窓がたくさんあるのがこの街の特徴らしいです

来年のLibreOffice Conferenceはスペインのアルメリアだそうです。スペインは行ったこともないですし楽しみです。

LibreOfficeを使うときに知っていると便利な7つのこと

LibreOfficeは豊富な機能を持ったソフトウェアで、全部を使いこなしている人はいないだろうと思います。この記事では、私が知っていると役立ちそうと考えたLibreOfficeの7つのことを紹介します。 1つ1つは基本的なことですが、これを全部やるのとやらないのでは便利さはだいぶん違ってくると感じています。ブース出展や勉強会でお話していると全部は知らなかったという方も多いので、費用対効果の高そうなものから選んでみました。

この記事はLibreOffice Advent Calendar 2018 の2日目です。1日目は小笠原さんの「LibreOffice Conference 2018 Tirana 裏レポート」でした。

目次

  1. スタイルを使いこなす
  2. サイドバーで設定をする
  3. Impress:マスタースライドで複数スライドで共通部分を作る
  4. Impress:アウトラインモードで編集する
  5. Drawで図形を描いて、Writerなどにコピペする
  6. ヘルプを検索する
  7. LibreOffice onlineと役割分担する

1. スタイルを使いこなす

スタイルとは、文書での見た目の部分についてまとめて設定する仕組みです。Webでスタイルシートと呼ばれているものと同じです。たとえば、各段落に対してフォントの種類やフォントサイズを直接指定した場合、段落の数が多いと設定や変更が大変です。多くの場合は書式がバラバラになってしまい読みにくいものになります。そこでスタイルに書式を設定しておいて、段落などに対してそのスタイルを指定することで楽にミスも少なく編集できます。中身のコンテンツと見た目の設定を分離するという文書の構造化という考え方があり、LibreOfficeだけでなくオフィス系のソフトウェアはだいたいそれにそって作られています。

LibreOfficeでは、どのアプリケーションでもスタイルを使うことが前提になっています。スタイルを使っていなければ使えない機能もあります。例えば、Writerではページの設定はページスタイルで行いますし、見出しスタイルを使うことで、目次を自動生成&自動更新したり、ナビゲータで移動できます。Calcでは条件付き書式設定でスタイルを使っています。

Writerでは6種類のスタイルがありますが、基本は「段落スタイル」と「ページスタイル」で、この2つを使いこなせれば十分だと思います。スタイルの使い方については、野方さんの第6回関西LibreOffice勉強会のスライド「スタイルを使ってレイアウトをかっちり決めよう」も参考になるでしょう。

Calcでは「セルスタイル」と「ページスタイル」の2つのみです。合計の列を色を付けておくなど、セルスタイルで定義しておくと便利です。

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去年のカンファレンスレポート記事の原稿でスタイルを使っている図。今見たら、最初の段落に適用するスタイルは、見出し1でなくてタイトルの方がよかったですね...

2. サイドバーで設定する

LibreOfficeでは、右側にサイドバーがあります。ここで様々な設定ができて便利です。私はサイドバーを使い始めてからは、メニューやツールバーのボタンを使うことが劇的に少なくなりました。Writerの場合、「プロパティ」「ページ」「スタイル」「ギャラリー」「ナビゲータ」の5つを切り替えることが出来ます。「プロパティ」は、文章やオブジェクトなど現在選択しているものによって、設定項目が自動的に切り替わってくれてとても便利です。「スタイル」では先ほど説明したスタイルを設定します。CalcやImpressなどでもWriter同様、サイドバーを使うと便利です。また、サイドバー自体は表示/非表示を切り替えることもできます。

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サイドバーを表示させているところ。文章入力モードなのでフォントなどのプロパティが出ています

3. Impress:マスタースライドで複数スライドで共通部分を作る

Impressで発表資料を作る場合には、ヘッダーやフッター、背景、スライドタイトルの位置など、各スライドの内容は統一することが多いと思います。その統一的な設定を「マスタースライド」で設定しておくと便利です。一括して設定/変更する時に威力を発揮します。

マスタースライドを設定したい場合は、メニューから[表示]-[マスタースライド]を選択して呼び出します。標準モードに戻るには、メニューから[表示]-[標準]を選択するか、ツールバーで[マスター表示を閉じる]ボタンをクリックします。

スライドに適用したい場合は、サイドバーの「マスタースライド」を選択し、使いたいものをクリックします。その時に右クリックから全部のスライドに適用することも出来ます。

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マスタースライド画面(LibreOffice Conference 2018の発表者用テンプレート)

4. Impress:アウトラインモードで編集する

発表資料を箇条書き主体で作るケースには、アウトラインモードが威力を発揮します。レベルの上げ下げで、スライドタイトルにしたりスライドの中身に変えたりもできます。また、順番を入れ替えることも容易です。私はテキストエディタで箇条書きでスライドタイトルを並べていって、そこからImpressにコピペしてアウトラインモードで追記、調整することもあります。

アウトラインモードに切り替えるには、メニューから[表示]-[アウトライン]を選択します。

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アウトラインモードでみたところ

5. Drawで図形を描いて、Writerなどにコピペする

Writerなどでは図形を組み合わせて描いていると、図形が変なところにずれたり図形の配置を簡単に揃えられなかったりします。図形を描くにはDrawが適しているため、Drawで描いてコピペで他のアプリに貼り付けると便利です。今後も図形をメンテナスしそうな場合はコピペ元した後に、Draw形式で保存しておくといいでしょう。Drawでは(Impressでも)ツールバーの「配置」ボタンを使って簡単に配置を揃えることができます。

6. ヘルプを検索する

メニューなどにある知らない機能を調べたい場合や、操作方法が思い出せない場合にはヘルプが参考になります。LibreOfficeでは基本的には全機能についてヘルプを作ろうとしています。たまに開発者が忘れていたためかヘルプがないこともありますが、多くの場合ではあります。組み込まれているヘルプを見るほかに、同じ内容がWebサイトにもありますので、Webの検索エンジンで調べる手もあります。

7. LibreOffice onlineと役割分担する

これは基本的な話ではないかもしれませんが、便利なので紹介します。LibreOfficeではWebブラウザで編集するオンライン版があります。品質面や機能面では完成されていませんが、割り切れば使えるレベルになってきました。ブラウザでみれるので、PCだけでなく、スマートフォンタブレットでチェックすることも出来ます。同時編集機能があり、議論しながら一緒に編集したいときには便利です。

LibreOfficeのデスクトップ版がバックエンドで動くので、デスクトップ版と基本的に表示は同じです。このように、GoogleDocsなどと根本的に思想が違うので、使い方も違ってきます。普段はデスクトップ版でファイルを作成・更新し、Nextcloudなどでファイルを自動で同期しておきます。他の人にチェックしてもらったり加筆修正をして欲しい時など、コラボレーションしたい時のみオンライン版を使うと便利です。

構築手順はLibreOffice kaigi 2018での村上さんの発表資料「LibreOffice Online 環境の構築 2018年版」も参考になると思います。

以上、7つを紹介しました。もし参考になる情報があればうれしいです。 明日のLibreOffice Advent Calendar 2018は荒川さんの「OfficeとWebAPIの未来」です。楽しみです。

関西オープンフォーラム2018に参加しました

2018年11月9日(金)-10日(土)に大阪南港 ATCで開催された関西オープンフォーラム2018に参加しました。関西のオープンソースやITコミュニティが年1回集まるイベントで、今回で17回目になります。 オープンソースカンファレンスが京都と大阪で開催されるようになりましたので、オープンソースコミュニティについては年3回集まるともいえます。私はKOFの実行委員ではありますが、ブース要員の方が手薄なので、LibreOffice日本語チームと日本UNIXユーザ会のブース番をしました。アイクラフトのブースも関わっていますがそちらは他の人にお任せしていました。

f:id:shinji_enoki:20181110132944j:plainLibreOffice日本語チームブースの様子)

jusブースでは歴代会長を展示するという企画で、いろんな幹事が交代で番をしていました。古い機関紙やUNIXをコピーにつかっていたテープなども展示していました。1984年ごろの機関紙/etc/wallの創刊号に載っている逸話などを砂原先生から聞いたりして面白かったです。展示会で各社の実機があったので、その場でパフォーマンステストのプログラムを書いて、実行させてもらって比較して記事をかいたそうです。

セミナー企画では、アイクラフト枠でアフリカ人インターン3名がLibreOfficeについてのセッションを行いました。私はメンターとしてスライドをレビューとディオドネのスライドの日本語翻訳をしました。少し心配していましたが、3人とも堂々と落ち着いて話していてよかったです。ショーケース4の小さい部屋でしたが14名ほど(身内も何名かいましたが)来てくれました。

f:id:shinji_enoki:20181110143045j:plain(ディオドネのトーク中の様子)

続いて、LibreOffice日本語チームの枠では、近藤さんから「超珍グラフで学ぶ!図解表現のアンチパターン」と題した発表がありました。前半はLibreOfficeを導入する際のチェンジマネジメントについての話で、後半がチャートについてのアンチパターンでした。3Dグラフや縦軸のないグラフなどいくつかごまかし方のテクニックが紹介されました。奥村先生が時々指摘されているネタに近かったです。 サンプルを作るだけでも心が痛かったそうです。こういったごまかしを知って騙されないようにすると共に、自分では作らないようにしましょうというお話でした。

f:id:shinji_enoki:20181110153300j:plainLibreOffice日本語チームの近藤さんのトークの様子)

日本UNIXユーザ会(jus)は法林さんによる「平成生まれのためのUNIX&IT歴史講座 〜1990年代前半編〜」と題した発表でした。砂原秀樹さん、齊藤明紀さんというjus幹事をゲストに迎えてコメントを挟むスタイルで盛り上がりました。商用インターネット接続がなかった時代で、ネットワーク相互接続のためのUNIX Fairというイベントを行ったりしていたそうです。また、この時代は標準化が進んだ時代だそうです。いろいろ試してみることが重要で、試したものが生き残らなくても無駄ではないとのことでした。今の時代もAIなど混沌としていてこの時代に近いかもしれないとのお話もありました。

f:id:shinji_enoki:20181110160530j:plain(jusのセッションの様子)

また、ステージ企画といって、ブースエリアでの15分間のミニセミナーでは、アイクラフトの村上さんが今年9月にアルバニアで開催されたLibreOffice Conference 2018の報告をしてくれました。機内ビデオが凝っていたとか、小ネタを挟んだお話でした。(カンファレンスの様子については日経XTECHの記事もご覧ください)

KOFでは基本的にコミュニティや企業が自主的にセミナー企画を行います。今年も面白そうなお話がたくさんありましたが、ブース番などで動けずに見逃して残念でした。唯一聞きにいけたのは、平見知久さんによる「OSSで運用管理 〜インシデント管理・構成管理ツールOTRSとその界隈〜」でした。OTRSは問い合わせ管理などのチケットシステムとしては歴史があり、豊富な機能を備えています。ITILのどの部分をカバーしているかや、他のOSSの問い合わせ管理システムの紹介もありました。OTRSは次期バージョンからオープンソース版はしばらくリリースされないとのことで、利用するなら今のバージョンを使い続けることになりそうです。

実行委員会から講演をお願いしているセッションもあります。基調講演のようなものですが、毎年5−6個あるので講演会という名前をつけています。今年は6つありどれも面白そうでした。 若林健一さんの「CoderDojoの経験からみたコミュニティの未来」は私がいつも気にしているコミュニティをどう発展継続させるかというお話だったようです。楠正憲さんの「仮想通貨とブロックチェーン」はとても気になっていました。「保護者を巻き込んで情報モラル等を考えてみた」も大変盛り上がったようです。私はどの講演会も見に行く余裕がありませんでしたがあとでYoutubeに録画が公開される予定ですので、それを楽しみに待ちたいと思います。

f:id:shinji_enoki:20181109183018j:plain(金曜日の夜に行われた懇親会の乾杯の様子)

今年も様々なコミュニティや企業が集まって盛り上がりました。2日間で1000人くらいではないかとのことでした。参加者が減少傾向ですので今年はテコ入れしたかったのですがそこはうまくいきませんでした。実行委員が忙しい人がおおくて、準備が後手に回りがちでした。来年は早めに手を打って巻き返しをしたいと思います。

次はLibreOffice日本語チームや日本UNIXユーザ会として、関西では2019年1月のオープンソースカンファレンス大阪に参加します。また、他の地域では12月のオープンソースカンファレンス福岡にも参加します。

The Document Foundationの運営の仕組みについてのメモ

LibreOfficeを支える団体であるThe Document Foundation(以下TDF)のメンバシップコミッティー選挙がありました。私もTDFメンバなので投票する権利があるのですが、投票する前に規約などを読み返したのでメモしておきます。間違っていれば指摘いただけるとありがたいです。

TDFはLibreOfficeコミュニティを支えるために、LibreOfficeコミュニティのメンバによって設立された非営利団体です。ベルリンに拠点を起き、ドイツの法律に基づいた法人です。

以下に簡単にメモを書きますが、詳細はTDFの規約を参照ください。

TDFは、規約上は、Board of Directors(以下BoD)、Board of Trustees(TDFのメンバのこと)、Membership Committee(メンバシップコミッティー)の3つからなっています。

Board of Directors(BoD)

BoDは、理事会や取締役会と言うべきもので、ガバナンス上の意思決定を行います。お金などの資源管理、予算や会計、年次報告の作成などに責任を持ちます。もちろんBoDメンバが個々のタスクを行うという意味ではないです。LibreOfficeのイベントをやるときにスピーカーなどの旅費申請をすることがありますが、ここが承認します。一方で技術的なことにはタッチしません。技術面はEngineering Steering Committeeで決定します。TDFのメンバであれば立候補でき、、TDFメンバによる投票で選ばれます。任期は2年です。7名のメンバと3名のDeputies(代理人?)からなります。

どうでもいい話ですが、ここにプロフィールが書いてあって便利です。Marina(マリーナ)がStudio StortiからCIBに転職したことにいまごろ気が付きました。だいぶ前にミュンヘンに引越ししたので転職したんだ、とは思ってましたが。 f:id:shinji_enoki:20180905010829j:plainLibreOffice Conference 2017, Rome ItalyでBoard of Directorsメンバが紹介されているところ。立っている人がBoDメンバですが、なぜかマリーナだけ右端に座ってます)

Board of Trustees

Board of TrusteesはTDFのメンバを指しています。入会資格は誰にでもあります。入会の条件としてはTDFの目標に向けて検証可能な活動を3ヶ月以上した人で、今後最低6ヶ月以上活動する意志がある人です。もちろん、礼儀正しさや寛容さ、オープンな精神は求められます。運用上、活動を確認できる2名以上のTDFメンバ(ある種の推薦者だけど、確認できればOKのよう)か別の確認方法が必要だったと思います。メンバシップは毎年更新され、どんな活動をしたのか、どんな活動をするつもりなのかを毎度聞かれます。Webのメンバリストを数えると195名います。ただしこのリストは3ヶ月に1回程度しか更新されません。

Membership Committee

Membership Committeeは会員の入会や継続の手続きを行うことと、BoDの選挙管理を行います。もめた時にBoDの弾劾も出来るようです。TDFのメンバであれば立候補でき、TDFメンバによる投票で選ばれます。任期は2年です。3人以上の奇数人数で構成され、TDFメンバの10%が人数の上限です。Executive Boardが選挙管理するそうです(Executive Boardって?BoDが選挙管理するはず)。BoDほど忙しくはなさそうですが、これも重要な役割です。そういえば、会員更新手続きを忘れていた時に、更新しないの?とMCのメンバがSNSで聞いてくれたことがありました。

Advisory Board

Advisory Boardという機関もあり、名前の通りアドバイスや提案するためのグループです。決められた金額の年間寄付をした組織と、他のFLOSSコミュニティで構成されています(たぶん他のFLOSSコミュニティからは寄付は受けてないと想像していますが、調べていません)。TDFの収入は、個人からの寄付と、このAdvisory Boardメンバ組織の寄付からなります。組織の規模によって金額が違います。また、雇用している認定LibreOffice開発者によっても金額が違ったと思いますが、今は金額を見つけられませんでした。

特定の組織による支配をさけるため、BoDやMembership Committee、Advisory Boardは、同じ組織に雇用されている人は1/3までというルールもあるようです。

もう情報が古いのですが、TDFの組織というページもあります。

BoDやMembership Committeeの選挙システム

候補者を1人選ぶのではなく、複数人に投票できるMeekメソッドを利用しています。(Wikipedia:単記移譲式投票) 今回のMembership Committee選挙だと10名の候補者に対して、最大9名まで投票することが出来るようになってました。少なくても5名は必要で、最大4名のDeputiesが選ばれるそうです。いまいち人数をどう計算しているのか理解できていません。 投票するには、TDFメンバ向けに送られてきたメールにしたがって、投票用のWebサイトにアクセスしてメールアドレスと投票トークンを入れて認証します。投票時には、選んだ順番も意味がありそうですが、アルゴリズムを理解しきれてないです。Gnome Foundationの投票システムを使わせてもらっているようです。

TDFメンバになる方法

申請フォームから申請します。継続的に活動している人であれば、どんな貢献をしたか、それを確認できるアカウント名などをちゃんと書けばOKです。日本人は4名しかしないのですが、活動していているのに申請していない人が多いことが理由です。ちょっと面倒かもしれませんが、活動しているならメンバになってもらえるとうれしいです。

f:id:shinji_enoki:20180905010831j:plain (おまけ。LibreOffice Conference 2017, Rome ItalyでTDFスタッフが紹介されているところ)